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2020年度、全日本吹奏楽コンクール課題曲(Ⅰ~Ⅳ)について、少しばかり私なりの印象や演奏上のポイントを書いてみたいと思います。
スコアには作曲家のコメントが記載されています。このコメントは演奏する者にとって大変貴重なものです。一方、私は作曲家ではなく、指揮やトランペットの演奏が専門ですので、記述する内容はあくまでも私の専門分野からの観点や切り口であることをご承知願えれば幸いです。そして演奏される方々に僅かながらでもお役に立てれば嬉しい限りです。
加古勉

課題曲 Ⅰ トイズ・パレード(第30回朝日作曲賞受賞作品)/平山雄一


■スコアを眺めて先ず気が付いたのは、とてもきめ細かくアーティキレーション指示やダイナミックス指示が施されていることでした。これは平山氏が演奏者に対し一つ一つの音をどんな感じで演奏して欲しいのかについて明確なメッセージを持って書かれていると言えましょう。かといって、演奏者の自由な解釈や創造性の入り込む余地を奪っているわけでは決してありません。譜面に書かれているアーティキレーションやダイナミックスをきちんと守り、その上に立って演奏者の個性(自由な解釈や創造性)が加わることを望まれているのだろうと推測します。

■普通マーチの場合、終始一貫したテンポ設定がされています。また、ある部分に「rit.→a tempo」のパターンがある曲も多々あります。しかし、この作品の場合、曲の最後近くに「molto rit.→G.P.→Lent→poco a poco accel.→Tempo Ⅰ」といったユニークなテンポ設定があります。マーチの場合にはこのようなパターンがあるのはとても稀だと思います。私がこの部分で気をつけたいのは、どのぐらいのmolto rit.をかけるのか、どのぐらいの長さのG.P.にするのかということです。 そこで大切なポイントは、テンポ変化がある部分の前後の曲想やニュアンスとの関連性を失わないことだと思います。この部分だけが違う世界になってしまわないような配慮が必要だと思います。

■平山氏のコメントの一部分に「物語や情景を想像し、楽しんで演奏していただけることを期待しています」と書かれています。そこで私なりに想像したことを書かせて頂きます。先ず、トイズ(おもちゃたち)とはどのようなトイズなのでしょうか?私のイメージは1種類だけではなく、いろいろな種類の動物たちです。そして単に歌っているだけではなく、みんな一緒に仲良く楽しそうに、そして凛々しく歩いている情景です。可愛いリスたちが歩いている場面、強そうなライオンが歩いている場面、ゾウさんがノソノソと歩いている場面、犬と猿が腕を組んで仲良く歩いている場面などと、いろいろな場面が目まぐるしく映り変わっていきます。まるでディズニー・アニメの世界です。私のこんな想像、大変お粗末さまでした。

何はともあれ演奏者各自のイメージを大切にして演奏して下さいね!


課題曲 Ⅱ 龍潭譚/佐藤信人


■この作品から受けた第1印象は「モチーフをとても大切にしている」ということです。勿論モチーフの原形だけを固持固執しているのではなくフレキシブルにその形を変えながらも全編に渡ってモチーフが貫かれている作品だと感じました。当然ながら演奏者もモチーフに対する意識をしっかりと持つことが必要なように感じました。

■この作品についてのコメントを書くにあたり「泉鏡花」「龍潭譚」について付け焼刃的に調べてみました。深くは理解出来ませんでしたが、佐藤信人氏のコメントにある「幻想、怪異、妖艶の薫り漂う泉鏡花の世界···。これらをどう表現すべきかを研究して頂ければ嬉しく思います。ぜひ小説もご覧になって下さい」というフレーズに大変共感した次第です。こういったバック・グラウンドの研究や調査を行うことにより演奏者がより豊かなイメージを持つことか出来、それがより優れた演奏に繋がることと思います。

■佐藤信人氏のコメントにはありませんでしたが、私が個人的に付け加えたいことが一つあります。それは「色彩」の要素をしっかりとイメージして頂きたいということです。そうすることによって更に素敵な演奏になると思います。よく色彩については作編曲家のオーケストレーションが負う要素とか、同じ楽器でもメーカーやモデルの違いによると考えられているようですが、私は演奏者の色彩に対する感性も大きく影響していると信じています。それは奏法的にどうすればいいとかいうものでなく、やはりイメージをしっかり持つということだと思います。音楽は理屈を越えた要素、つまり「マジック」の要素があるのではないかと思います。

■少し細かいことを4点だけ触れてみます。
① 22小節目:もし私が指揮をする場合、ホルンの入りのタイミングですが、私はタクトで指示せず、ホルン奏者に任せます。勿論、練習の段階ではフィンガーシンバルのあと、どのぐらいの「間」をとるかを予め打ち合わせしておきますが。
② 25小節目から4小節間:25小節目から8分の6拍子に変わったことを表現出来るのはティンパニとトム以外にありません。拍子の意識をしっかり持って演奏しないと、4分の3拍子に勘違いされてしまいます。何回も聴いている人は別ですが、初めて聴く人は尚更だと思います。
③ 55.57.59.60.61.62小節目:「トランペット1番&2番・トロンボーン1番」の譜割りと「バスーン・バスクラリネット・バリトンサックス・テューバ・ストリングベース・ティンパニ・トム」の譜割りの違いに注意して下さい。「トランペット1番&2番・トロンボーン1番」の譜割りにある16分休符のところは必ず隙間を空けること、そして16分音符をある程度しっかりと(クリアー)に吹くことがとても大切だと思います。
④ 76.78.80小節目:「バスクラリネット・バリトンサックス・トロンボーン3番・ユーフォニアム・テューバ・ストリングベース・ティンパニ・バスドラム」の1拍目に2つの8分音符があります(バスクラリネットは78小節目と80小節目のみ)。この2つの音は音量こそ大きくありませんが存在感がとても必要な音です。十分に意識して下さい。また、2つ共「同じ音量・同じ長さ・同じ形」で演奏することが大切だと思います。まるで一卵性双生児のように。


課題曲 Ⅲ 僕らのインベンション/宮川彬良


■課題曲には吹奏楽ファンのみならず、ほとんどの音楽愛好家なら知っている著名な作編曲家の作品が登場しています。更に彼等はいわゆるクラシック分野のビッグネームだけでなく、様々なカテゴリーから選ばれています。これは誠に嬉しい限りです。吹奏楽の作品に新しい感性が加わる可能性があるとてもいい企画だと思います。吹奏楽連盟の素晴らしい企画に拍手を送るばかりです。今回はご存知の宮川彬良氏。期待通りのクオリティーで、まさに珠玉の作品だと感じました。

■皆さんは次( A B )のように思った経験をお持ちでしょうか。
A :この曲は難しいが、とっても音楽的にいいので頑張って練習して、いい演奏をしよう!
B :この曲は難しいだけで音楽的につまんないから練習意欲が湧かないよ~。もう途中下車しちゃおうかなあ~?!
→→おそらくAB 共におありのことと思います。
「僕らのインベンション」は正にA だと感じています。
決して易しくはありません。しかしチャレンジのしがいがあります!

■スコアを見ていて、ふと気がついたこと。それはいわゆる数字による表示法(メトロノーム記号)が1ヶ所も用いられていないということです。全てAllegro ・Andante などの「速度標語」です。ご存知のように速度標語はメトロノーム記号のように正確なテンポ指定は出来ませんが、様々なイメージを伝えることが出来ます。
また曲想そのものを表す「発想(曲想)標語」も多く用いられています。
これらは宮川氏が演奏者に対して何よりも自らの音楽的メッセージを強く送りたいという気持ちの証ではないでしょうか。
テンポ設定だけに限って言えば、参考音源のテンポがいいと思えばその通り従ってもOK !また、とんちんかんでない範囲なら演奏者各自の演奏したいテンポでもOK!とまあ~そんなふうに感じました。

■大学部門、職場・一般部門の人達には必要ないと思いますが、中学部門、高校部門の生徒達にとってはひょっとして役立つかも知れない練習方法を2つ書いてみます。ありふれた方法で、ご存知の方も多いと思いますが、この2つの練習方法は、練習を開始する初期段階で役に立ち、ある程度譜読みに慣れてきたら必要としない(しない方がいい)練習方法だと思います。
① 小節を跨いで「タイ」が頻繁に付いています。こういった箇所では音の長さを把握するのに、やや苦労するかもしれません。まずタイをとって練習し、その後にタイを付けて譜面通りに演奏することが役立つと思います。
② 拍子の変化(メーター・チェンジ)もやや頻繁に出てきます。不慣れな生徒は困惑するかも知れません。このようなケースでは「分割する(サブディバイド)」のトレーニングがとても役に立つようです。説明するまでもありませんが簡単に書いておきます。例えば4分の2拍子から8分の3拍子に移る場面では頭の中で8分音符分割することです。
┃♪♪♪♪┃♪♪♪┃
このトレーニングは上手くタイミングが取れるようになればいつまでも続けない方がいいと思います。理由は本来の拍子感が損なわれてしまう危険性があるからです。


課題曲 Ⅳ 吹奏楽のための「エール・マーチ」/宮下秀樹


■曲の雰囲気に品の良さを感じました。これは作曲家の力量とは異なる何か(something)がもたらしているのかも知れません。持って生まれた何かかも知れません。こういう人は格調高い曲を創ろうと思わなくても自然に格調高い曲ができちゃうのでしょう。
話しが少しずれます。私は長年吹奏楽コンクールの審査をしていますが、品の良さ(エレガントさ)を感じさせてくれる指揮者の先生を時折お見受けします。素敵です!
作曲家にしても指揮者にしても、こういった方々をとても羨ましく「いいなあ~」って思う私です。

■宮下秀樹氏のコメント中「違和感のないサウンドになるよう心掛けました」「オーケストレーションはシンプルに仕上げました」とあります。私がスコアや参考音源から受けた印象はまさしくその通りです。だからこそ演奏者にとって一見簡単そうに思えても実は難しいのです。本質面をしっかりと表現することがとても大切だと思います。

■私の個人的な感想を一言書かせて下さい。それは表面部分に何となくブリティッシュ的な雰囲気と古関裕而的な雰囲気が入れ替わり出てくるような感じを受けたということです。しかし、その根底には宮下秀樹氏の大変優れた個性と感性が有ります。秀逸な作品であることに疑いの余地はありません。

■演奏をする上で気をつけて欲しいことを2点ばかり書いてみます。
① このマーチはレガート部分と弾むような部分が頻繁に入れ替わります。そこで大切なことは「音の形の処理」です。スタカート・マルカート・テヌートなどの吹き方をきちんと身に付け、そして使い分け出来ることがとても大切だと思います。
② J の4小節前からクレシェンドが始まり、更に2小節前からリタルダンドが加わり、その後 J に突入する形になっています。このような形ではややもするとJ からはマックス音量で演奏したくなるものです。しかしここはまだ我慢し、マックスではなくワンレベル音量を落とし、その後に備えることがポイントだと思います。おそらく意識しないでも、J の楽器の使い方と、その後 K の使い方が木管→金管になっていますので自ずとそうなると思います。ですのでJ からの木管はごく普通のワン・フォルテで十分でしょう。気持ちはわかりますが決してここは「めちゃ吹き」しないように気をつけて下さいね。マックスは L から最後までの8小節間だけです。ここいらへんが宮下氏の品の良さですかねっ。 ちなみに、このポイントは参考音源 ( 秋山和慶氏/オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ ) によって見事なまでに具現されています。


加古勉 (KAKO,TSUTOMU)
 高等学校在学中、相愛大学オーケストラのトランペット研究生として、故斎藤秀雄氏に2年間オーケストラ・トレーニングを受ける。 
 1976年、東京藝術大学音楽学部 (トランペット専攻) 卒業。1976年~1980年、アメリカ留学 (ヒューストン大学、インディアナ大学) 。アメリカ留学中「ヒューストン・メトロポリタン・シンフォニー・オーケストラ」「ヒューストン・ジャズ・メディック・オーケストラ」のレギュラー・メンバーを務める。
 帰国後はフリー・トランペット奏者として、これまでに「オーケストラ /日本フィルハーモニー、新日本フィルハーモニー、東京交響楽団、他」「吹奏楽団/東京佼成ウィンドオーケストラ、東京吹奏楽団、他」「金管アンサンブル/東京アーバンブラスアンサンブル、他」などにおいて活動。1989年にはエキストラ・トランペット奏者として「ソヴィエト国立レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」の日本公演に参加。
 吹奏楽の指揮者としては、これまでに計6枚のCDをリリースしている。
 審査員活動も精力的に行っており「日本管打楽器コンクール」「吹奏楽コンクール/全国、東日本、西関東、東関東、中国、四国、東海の各大会、他」「アンサンブルコンテスト/西関東、中国、四国の各大会、他」「日本管楽合奏コンテスト/全国大会」「日本管弦打楽器ソロ コンテスト/全部門審査統括委員長 (文部科学大臣賞選考会、他)」「日本クラシック音楽コンクール/全国大会、他」「全日本ブラスシンフォニーコンクール/全国大会」「ジャパン・ブラスバンド・アンサンブル・ナショナル・チャンピオンシップ/全国大会」「全日本小学生金管バンド選手権/全国大会」などの審査を行っている。 
 元「東邦音楽大学大学院教授」「昭和音楽大学講師」「尚美学園短期大学講師」「東邦音楽大学ウインドオーケストラ・スペシャルユニット(現、川越ウインド・シンフォニカ) 代表、音楽監督、指揮者」。 
 現在「日本トランペット協会副理事長」「日本ブラスバンド指導者協会理事/演奏技能検定委員会委員長」「東京アーバンブラスアンサンブル・トランペット奏者」「東京シンフォニック・ブラス音楽監督/指揮者」「東邦音楽大学ブラスクワイア指揮者」「東邦音楽大学ジャズ・オーケストラ指揮者」他。




        

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